テレビや雑誌などで「卒婚」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。卒婚とは、婚姻関係を解消せず、夫婦の役割を終えて別々の人生を歩む新しい生き方です。
離婚や別居とも異なる卒婚の意味やメリット・デメリット、気になる卒婚後の恋愛についてご説明します。
卒婚とは?
卒婚とは、離婚手続きや別居をすることなく(※)、夫婦が別々の人生を歩む形のこと。同じ家に住み続けたとしても、夫婦としての役割に縛られることなく、干渉し合うこともありません。それぞれの人生を尊重し、自由に生きるための選択肢のひとつです。
また、離婚や別居と大きく異なる点は、お互いに愛情や尊敬などの感情が残っているケースがあること。完全に関係を断ち切ることまでは望まないけれど、一度距離をとりたいといった場合にも、好まれています。
※夫婦によっては、卒婚の際に別居を選択するケースもあります。
離婚との違い
離婚とは「婚姻関係」を解消すること、卒婚とは「夫婦関係」を解消することです。
離婚の場合、法的に夫婦ではなくなるため、さまざまな手続きが必要となります。時間や手間がかかるだけでなく、周囲にも離婚したことを伝える必要があるなど、精神的にもストレスを感じるケースもあるでしょう。
離婚に伴う手続きの一例
- 離婚届の提出
- 住民票の異動
- 国民年金、健康保険の加入・変更手続き
- 不動産の名義変更 など
一方、卒婚の場合は、大切なことは夫婦お互いの同意のみです。それぞれが自由に人生を楽しむことができ、さらに必要に応じて、法律上の夫婦としてのメリットを受けることができます。
別居との違い
別居とは、夫婦が別々に暮らすことです。離婚を前提とした別居もあれば、夫婦関係自体は継続しているものの仕事やライフスタイルの変化に伴い一時的に別居するケースもあります。
一方、卒婚の場合、同居・別居を問いません。婚姻関係を継続したまま、夫婦生活を解消することを表します。
卒婚のメリットとデメリット
卒婚のメリット
面倒な手続きが不要
離婚の手続きには、大変な労力が必要です。スムーズに離婚できない場合は、家庭裁判所での離婚調停、離婚裁判などの手順を踏む必要があります。
お互いの同意があったとしても、財産分与、離婚届の提出など、時間や手間のかかる作業が発生します。離婚し名字が変わることで、クレジットカードやパスポートなども作り直さなければいけません。
一方、卒婚の場合、面倒な手続きは必要ありません。夫婦間で話し合う必要はあるものの、離婚に比べると圧倒的に負担は少ないです。
将来的に夫婦関係を再構築できる可能性がある
卒婚を選択するにあたっては、配偶者への不満や、子育てがひと段落したなど何らかの理由があるケースが多いです。
しかし、卒婚を選択し、相手の生き方を尊重することで、お互いの良さを改めて見直すきっかけになったといったケースもあります。再構築したいと思った場合にも、卒婚であれば、スムーズに元の暮らしに戻ることができます。
もちろん、離婚→復縁→再婚のケースもゼロではありません。しかし、精神的エネルギーが必要なことはもちろん、世間体も気になるところです。
法的手続き不要、お互いの同意さえあれば、夫婦関係の再構築ができる点は大きなメリットといえます。
生活・相続に関する恩恵が受けられる
卒婚の場合、法律上は夫婦のままです。そのため、卒婚したとしても、夫婦のどちらかが亡くなった場合、財産を相続することができます。また、結婚生活では、お互いが生活を支え合う扶助義務があり、収入の低い側は、夫婦生活中と同じく生活費を受け取ることができる可能性があります。
卒婚のデメリット
生活を支え合う義務がある
夫婦が生活を支え合う扶助義務は、立ち位置によってデメリットになるケースがあります。法律上の婚姻関係が続く以上、生活を支え合う義務はなくなりません。
収入の多い側は、相手の生活費を負担する必要が生じます。また、婚姻関係を継続している以上、配偶者が病気にかかったり障がいを負ったりした配偶者を扶養する義務もあります。
周囲に理解されにくい
年々高まりつつある「卒婚」という言葉の認知度。2017年時点では、40代以上の既婚女性の4割以上が「『卒婚』を知っている」と答えています。
しかし、半数の人は言葉自体を知らず、知っている人の中にも「理解できない」と考える人もいます。特に親や上の世代の人にとっては、理解しにくい価値観といえるでしょう。卒婚についていくら説明しても、理解を得られない可能性があります。
卒婚後の「恋愛」はしてもいい?
卒婚後の恋愛は、夫婦の合意があれば問題ではないと考えることができます。
しかし合意なく恋愛をするとトラブルにつながります。
婚姻関係が継続している以上、法的には夫婦ですので、卒婚後の恋愛に関しては、夫婦でよく話し合い「お互いに婚外恋愛OK」というルールを決めてからにしましょう。
なお、口約束だけだとどちらか一方が失念する可能性もあります。
言った・言わなかったのトラブルを避けるためにも「公正証書」に残しておくと安心です。
【まとめ】
卒婚は、多種多様な価値観が受け入れられるようになった現代における新しいパートナーの形の1つです。
戸籍上は夫婦のまま夫婦関係を解消することで、法的なメリットを受けつつ、自分にとって最適な人生を歩むことができます。
もちろん、卒婚によるデメリットもゼロではありません。しかし、このまま夫婦関係を継続することを選んだとしても、別のデメリットが生まれるはず。
これからの人生を考える中で、選択肢のひとつに「卒婚」を含めてみることをおすすめします。